元アマチュア役者デザイナーが意識している登壇時の心構え

この記事は「登壇者 Advent Calendar 2017」に寄せた記事です。様々な方の登壇に関してのノウハウや登壇してよかったことがまとまっていてとても刺激になります。ぜひこれまでの記事にも目をお通しください。

今年もおかげさまで

などなど、いろいろなところでお話をさせていただきました。登壇大好き人間なので来年もお声がけ、お待ちしております!

さて、宣伝はさておき本題に…

むかし演劇をやってた経験が今に生きている

私は昔々、10年ほど前までアマチュアの役者として京都で活動していました。毎日バイトをしながら稽古を重ね、数ヶ月に一度舞台に立つという生活を学生時代を含めて8年ほど続けていました。役者として食えるようになる、その夢は今は昔のものになりましたが、その経験が役に立っているとするならば司会や登壇時など人の前に立って何事かするときに、自然にいくつかのことに気を使えるようになったことだと思います。今回は私が舞台の上に立っているときにどんなことに気をつけているのかということを簡単にまとめたいと思います。

前提:なにはなくともまずは前を向く

一番まずいのは登壇者が絶えず下を向いていたり、後ろをやたらと向きがちだったり…というパターンです。舞台の上にはじめて立つ人はまず自分の身体を客席に向けることを訓練されます。首や目線が舞台上の別の誰かや横を向くことがあっても身体は客席に向かって開かれているように、とくに意識しなくてもできるようになることを要求されます。もちろん演劇ではそのままだと不自然ですので、真横を向いたり後ろを向くことはありますが、それはかなり意識をしてやっている、という状態まで持っていきます。

客席の目というのは自分の目線を定めるいわばアイキャッチとなる存在を絶えず求めています。ましてやセミナーのようなものは多くの場合壇上にいるのはひとりだけです。そのひとりがずっと後ろや横を向いていては目線の寄る辺がありません。もちろんスライドがあればかなり間はもちますが、よほど工夫されたスライド・美的なスライドでなければ5分と人の目線を集め続けることはできません。

とても大切なことはリアルに舞台上の人と客席の人たちが目線を交わしながらなんらかのコミュニケーションをしているという体験をもってもらうことです。そのために、できるだけ客席にいる人たちと目があっている(つもりの)時間が多くなるように意識しています。

登壇者ノートは最低限、1セクションに2〜3の箇条書き

そうはいってもスライドやメモのような資料から目を離して話すというのはとても不安で心細いものです。用意した原稿の内容を余すところなく伝えようとするあまり、つい資料から目を離せなくなる…ということは往々にしてあることだと思います。一番確実で理想的な対策は資料を早くから用意し練習をひとり重ね、ソラでも数十分語れるようになることですが、毎回そういうわけにはいきません。前日に慌てて準備した資料を引っさげて舞台に立つ、というケースもやはり褒められたことではないにせよあると思います。

こうした状態でも前を向きつづけるためには、できるだけ自身が用意した原稿の内容を単純化できることが重要になります。話の骨子は最低限の(見出しだけのようなものでも)スライドさえあればまず逸脱することはありません。大事なのはセクションごとの「ハズせないポイント」を2つ〜3つ、箇条書きにして書き出しておくことです。そしていわゆる手元の登壇者ノートはその「ハズせないポイント」だけで十分だと思います。逆に原稿をすべて文章調でズラズラ書くと現在位置の確認が大変ですし、進行を見失ったときに思いっきり手元に集中して客席をおろそかにしてしまうリスクがあります。

セクションが切り替わったら「ハズせないポイント」だけ目の端で確認してあとは客席にしっかり目を向けて話す、セクションが終わるときに話し忘れがないかちょっと確認する、くらいがよいところだと思います。

※あくまで自分が決めた、自分が話したいテーマについて話しているプレゼンテーションである、というのが前提です。ドラマの台本とは異なり、あなたの原稿は少なくとも90%はあなたから発された言葉であるはずです。緊張で忘れてしまっても、ちょっとのキッカケさえあれば重要なことは飛ばさないものです。

場の性質と客席のニーズを理解してから臨む

アルコールも提供されている宴席で披露するライトニングトーク(5分程度のショートプレゼン・LT)と何千円・何万円ものお金を払った人々が集う有料セミナー、あるいはカジュアルなコミュニティの中での勉強会での発表…当然それぞれ客席のニーズやコンテキスト(背負う文脈)は異なりますし、たとえ同じスライドをつかって話をするにしても、語る内容は異なるものになっていいと思います。

有料セミナーに来た人はやはり講師には内容が仮説であってもその試行錯誤につよい自信をもって話してほしいものだと思うでしょうし、コミュニティの発表であるならば他のメンバーの意見を真摯に伺う姿勢が評価されるかもしれません。宴席でのLTであればまずはエモさと一体感(単にテンション高くがなるだけでなく、いろいろな表現手段があります)、そして場にいる人への感謝を表現すれば、まず歓迎されるのではないかと思います。

その場によって求められる声量やテンション、テンポは変わってきますが、あくまで大事なのは「聴く人がどんなものを求めているのかな」と少しでも考えてから、ニュートラルに話す自分をちょっとだけ補正してみる、という意識なのかなと思います。

なお、ちょっと本題と外れますが司会の大事な役割は客席と舞台(登壇者)の両方に対して「何をしたらいいのか分からない時間をつくらない」ことが命題となります。この「相手が何をしたらいいのか分からない時間をつくらない」という目的意識は、司会でない、メインの登壇者であっても結構大事なことだと思っています。具体的には拍手のタイミングをゆるく示すなどのこともそれにあたります。ここいらへんは同じく「登壇者 Advent Calendar 2017」に寄せられた杉田さんのこの記事が面白いです。

LTを盛り上げるコツ「お・は・し」について語る【登壇者 Advent Calendar 2017】

自分の頭の後ろにもう一人の自分を置く

これは役者をやっていたころから感じたことですが、ほどよい緊張とともに舞台に立っていると、たまに自分の背中から自分が幽体離脱して、パフォーマンスをしている自分の後ろ姿を自分で見ている、いわばTPS視点で自分が見れることがあります。あくまでイメージですが。で、そういうときほど緩みすぎず、緊張しすぎず、いいテンションでやっている感触があったり。

これは誰かに「そういう視線をもつといいよ」と教えてもらってやっているうちに「これかな」と実感できたことですが、その感覚はセミナーなどの登壇でもきっと役に立つと思います。いささかスピリチュアルな話で恐縮ですが、ぜひ少し登壇中に余裕が出てきたときにでも意識してみるといいことがあるかもしれません。

おまけ…舞台前の儀式

さらにオカルトめいてきますが、演劇でも音楽でも舞台がはじまる前に円陣を組んだりする、ああいう小さな儀式を自分で設定することは意外に効果があります。私の場合、可能であれば関係者や共演者と握手をすることと、立ったまま自分の腰から上の力を抜いてだらりと脱力して数十秒キープし、その後静かに上半身を起こすことです。少し頭がスッキリします。握手はなんとなくアドレナリンが出ます。

まとめ

と、やたら上から目線な口調で走り抜けてしまいましたが、何事もつながっていくもんだなあと役者時代を思い出しながら書きました。今年もいろいろな舞台でお話させていただきましたが、来年もできる限り、いろんな方の前で得意なこと・興味があることのお話をできる機会を増やせるといいなと思っています。

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