フリーランスのわたしが独立5周年に想うこといろいろ

この記事はフリーランス Advent Calendar 2014 12日目のエントリです。

フリーランス6年生のわたしのこと

深沢幸治郎(@witch_doktor)といいます。水交デザインオフィスという屋号で、フリーランスのウェブサイト制作者として活動しています。

ウェブ制作者としての守備範囲

  • ウェブサイトの企画・設計
  • ディレクション
  • デザイン
  • イラストレーション(これは妻やパートナーさんにお願いしています)
  • HTML / CSSコーディング
  • WordPress・concrete5などのCMSの導入・実装
  • ウェブサイトの運用支援・よろず相談
  • 講師や司会なども

その他、守備範囲外のことについても相談承ってます。パートナーさんと連携することによって対応できることいろいろあります。

取引先さま

  • 直接受注(個人・小規模事業主)…30%
  • 直接受注(企業等団体)…30%
  • 他のフリーランサーから…20%
  • 代理店・制作会社様から…20%

近年、直接受注の割合が増えております。
運営者としてコワーキングスペースに毎日いることもあり、他のフリーランサーさんが請けた案件のチームメンバーとして動くことも結構あります。
おもな実績がWordPressを用いたウェブメディアの設計構築ということもあり、個人や小規模事業者さまとのお仕事も増えてきました。

その他のこと

  • 結婚6年目(2008年11月〜)。妻の家の名字を取りました。
  • 男児2人(2014年12月現在5歳と0歳)
  • コワーキングスペース「JUSO Coworking」運営
  • じつは宅地建物取引主任者の有資格者

基本的なことを挙げましたが、まあいろいろやっております。

関連エントリ:

既婚・子持ち・共働きのフリーランス生活を円滑にするために

フリーランスになった経緯と理由

2001年から細々と続けてきたデザインとウェブサイト制作の経験を元手に2007年、28歳のとき、結婚を前に遅い就職を果たしました。紙もののデザインを主な業務にしながらウェブサイトもつくる、というスタンスの会社でした。ウェブサイトのデザイン・コーディングから、紙ものも含む制作物のコンセプト企画立案まで、いろんなことをやらせていただきました。自身の要領も悪く、基本終電帰りの毎日でした。

おおよそ3年弱で職を辞し2009年12月に独立

私の場合環境が特殊で、婿入りした妻の家が代々商人の家ということで、自営業であることがむしろ自然という空気がありました。帰宅後毎日二人で話し合い、妻に背中を押される形で独立するという格好でした。

その当時、一番気にかけていたのは妻のお腹の中にいた子どものことでした。そのころの私は朝9時に家を出て夜23時に帰る毎日でしたので、まず子どもと関わる時間を十分に持つことが難しいだろうということは予想できました。妻もビル家業の事務経理で共働きであり、人生のベースたる家にリソースが費やせない状況になることは目に見えていたわけです。それは避けなければならない、と。

また私としても会社での仕事の請け方や回し方に不満があり、それを妻にしゃべっていました。今にして思うと稚拙な理想論も実に多かったと赤面するのですが、確かに将来を描きにくい環境ではあったと思っています。

ならば仕事も自分たちでコントロールして、家へのリソースも、商売上のチャンスも、すべて取れるように欲を張ってみようと決意したのです。失敗したら見切りは早くして、どこででも働こうというくらいの気持ちでおりました。

これまでのフリーランス生活:よかったこと、あるいはコミュニティのこと

Twitterなくして独立はなかった

2009年はTwitterが多くのウェブ制作者に浸透しはじめた年でもありました。それも比較的情報感度が高く、面白い人々がそこに集まっていたように思います。会社員の頃から私は彼らの集まる場所に出かけるようになり、そこには良質なコミュニティが形成されていきました。

その中に少なからずフリーランスの人も含まれており、また、フリーランスになろうとしている人たちが多くいました。事実私を含め、私の身の回りで2009年〜2011年にかけて独立ラッシュが起こっていました。

そうした人々と関わるうちに、自分の考えや仕事に自信がわいてきたということはとても大きなことだったと思います。会社の人脈を利用して独立するとかクライアントをひっこぬくような危険な真似をしなくても十分独立できる。2009年に私はそう感じて独立しました。

独立1年目は様々なツテを頼って小さな仕事をいただく毎日でしたが、今につながるような大きなお仕事をいただけたのは、Twitterで知り合った人々からでした。

WordPressとの出会い

WordPressとの出会いもフリー1年目、Twitterを通じて知り合った方に紹介された案件でした。Movable Typeも同時にさわってみて、両方共テンプレートを制作できるようにはなりましたが、その後WordPressでの受注が増えMTの組み込みに関しては思い切ってエキスパートにお願いするようにしました(なおMTはWPに比べてタグが簡便で組み込みやすいところが素晴らしいと思っております)。

2011年、WordCamp Kobe 2011に参加したのは初めて技術コミュニティにコミットした経験であり、私にとって大きな出来事でした。

もう言われつくされた感はありますが、勉強会であれ特定の技術であれオープンソース・ソフトウェアであれ、なんらかのコミュニティに属して、そこに主体的に関わってみるということはフリーランスにとってはとても大きな財産になると思います。スキルと仲間、仕事につながる話を得ることができる(仕事はあくまで副産物だと思ったほうがいいですが)貴重な場です。

JUSO Coworkingを立ち上げる

これについてはJUSO Coworkingのウェブサイトで何度かことの次第をご説明しているので、ここでは簡単に済ませますが、妻の家業であるビル経営と私のウェブ稼業をつながられるような形態の、場所の活用法はないかと探していたのが始まりでした。

JUSO Coworkingがconcrete5ユーザーグループなど新しいコミュニティへの扉になっていることは間違いなく、かなりの俺得スペースになっているのですが、もっと多くの方にとってのおトクなスペースにしたいです。まあこのあたりはコワーキングAdvent Calendar 2014でゆっくり書きましょう。

コミュニティの真ん中で愛を叫ぶ

ココで申し上げたいのは、フリーランス生活の中での私のキーワードは間違いなく「コミュニティ」でして、「あのころのTwitter」も「WordPress」も「コワーキング」も、すべてコミュニティなのでした。それぞれの中で、できるかぎり真ん中に行って、大きい声を上げたいと思って動いてきました。これが私のフリーランスとしてやってきた営業のほとんど全てであり、スキル磨きのほとんど全てでもあります。

これまでのフリーランス生活:失敗したこと。カッコ悪いこと

いいことばかり言っているようですが、もちろん失敗やカッコ悪いこともたくさんあります。いくつかさらして厄祓いをしたいと思います。

「理解がないクライアント」を笑い話にしていた

今でもよく見る「クライアントあるある」ネタ。私もTwitterにそういうネタを投下していたこともありました。
しかし身分を明かさない会社員であればともかく、自分の名前が看板になってるフリーランスがやるべきことではありません。

それに気づかせてくれたのは様々な同業者の示唆に富んだエントリやアドバイスでした。
今でもたまに読むのは秋葉秀樹さんのこのエントリです。いわば座右のエントリですね。

デザインの「修正」に対して思う | 秋葉秀樹個人ブログ

クライアントが私たちの仕事の都合を理解できていないのは当たり前のことだし、そこから生じる齟齬を回避するのは私たちの仕事です。それを棚に上げてクライアントを笑いものにしたり、一方的に文句をたれるのは忌むべき態度だと思います。

ローカルマシンのバックアップを取っていなかった

メインマシンのローカルバックアップは必ず取りましょう。十分な自動バックアップのための手間と費用は惜しんではいけません。マシンを買って1年は妙なことはないだろうし、独立後1年目のどこかで買おう…そう思っていた私でした。

ええ、死にかけましたとも(; ˘ω˘)

ある朝、買って半年のiMacが何の前触れもなく、HDDを認識しなくなり起動できず。Apple Storeに持って行くも「HDDの内容は戻らないかも」との回答。目の前が真っ暗になりました。当時少ないながらも大切な案件が進行中。データが戻らなければ100%間に合わない……。クライアントがいる東京に行き土下座する絵さえ瞼の裏に浮かびました。

その窮地を救ったのは、1ヶ月ほど前に噂を聞いて「一応」導入してみていたDropboxでした。当時積極的に利用していないながらも、目下進行中の案件データはそこに入っていたため、修理中の代替マシンはレンタル業者で借り、データはDropboxからサルベージすることで九死に一生を得ました。ラッキーでした。

ということで、データのバックアップは必ず取りましょう。ケチるところではありません。

もちろん他にもありますが、さすがにクライアントさんに関わることはしゃべれません。そんな話のひとつやふたつ、みなさん秘めているということで…

フリーランスとして生きていくことについて、いろいろ

フリーランス稼業がつらくなるときはもちろん私にだってあるのです。
なんだいきなり、という感じですが、そんなときに有効なのは「なぜ私はフリーランスになったのか」と己に問うてみることです。「初心忘れるべからず」というやつですね。

あなたがフリーランスである価値は、あなたの心とあなたの環境にしか求められない

「フリーランス メリット デメリット」とググればいくらでも情報は出てきます。ですがそれは、あなたにとって決定的な情報ではありません。大切なことはあなたがフリーランスになりたい理由・なった理由と、あなたを取り巻く環境です。

環境は変わっていきます。毎年うつろう環境とフリーランスになった初心を突き合わせてみる。一年に一度必要な心の大掃除だと思います。

会社員に戻ることは、フリーランス生活のひとつのゴールでありうる

フリーランス生活の果てに再就職することにネガティブなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはないと思っています。憧れの会社があったとして、その会社に入るために必要なスキルと感覚を身につけるのにフリーランスになるのが最短距離であった、ということは十分に有り得ることです。
またフリーランスとして培ったコスト意識をもって業務に当たれる社員は頼もしい、と考える会社も多いことと思います。

なにより、フリーランスとしてお付き合いをするうちに素晴らしい、貢献したい会社に出会うこともあるわけですからね。

「先生きのこ案件」に惑わされすぎないように

よく喧伝される「ウェブ制作者がこの先生きのこるためには〇〇は必須」という文言。どうしてもこの文言の一部「先生きのこ」が浮いて見えるので一部で「先生きのこ案件」と呼ばれてます。

ええ、そういうお話のほとんどが正論です。たいてい実力も経験もある方がおっしゃるので説得力もあるし、頷くところも多い。しかしこれを無条件に鵜呑みにしていては何を勉強するにも中途半端になってしまいます。いわゆる「あさイチが勧める健康体操をすべて実行することはできない問題」に近い。

もちろん業界の動向を捉えて動くことはとても大切です。ですが「この先生きのこ」をおっしゃる方は基本的に皆さん、その技術や考え方をすでに実践しているからおっしゃられるわけで、ある意味ではポジショントークなのです。「そうなったらいいな」とか「そうあるべし」という主観が混じる。

生きのこる道はたくさんあります。こうした一種の煽りに変に焦ったりするのではなく、自分の立ち位置をしっかり考えた上で受け止めればよいのだと思います。「強者生存」でなく「適者生存」がこの世の理、生きのこる道はたくさんあるはずです。

Re:これからのフリーランスに必要だと感じることはなんですか?

生意気を申し上げたところで私が「フリーランスがこの先生きのこるためには」というお題をいただくというなんとも皮肉な展開、質問者は前日のフリーランス Advent Calendar 2014を担当されたOleinさん(@Olein_jp)です。内角高めの直球、なんとか打ち返したいという所存です。

2つお答えします。あくまで私が大事にしたいこと、ということでご承知いただければと思います。

コミュニティを形成する力

先に述べたとおり、私はコミュニティをキーワードにして5年のフリーランス生活を送ってきました。コミュニティに主体的に参加し、そこからスキルと信頼・人のつながりを引っ張ってくるというやり方は、どんなに技術が進歩しても変わらないことなのではないかと思います。そういう意味では、コミュニティ運営はもっともつぶしが利くスキルと言えます。

イベントに失敗したり、人間関係がおかしくなったり……ノーリスクではありえないことではありますが、勇気を出して飛び込み、失敗すれば真摯に反省する中でスキルは上がっていくでしょう。

熱意ある中小零細業者の「かかりつけ医」になる力

コンテンツ・マーケティングと様々なCMSの隆盛という後押しもあり、これほどまでに中小零細業者のウェブ活用がクローズアップされる1年もなかったのではないでしょうか。

もはやウェブサイト作成に必要な技術障壁が問題ではなくなりつつある現在、多くの方が気づきだしたのは「どう作るか」でなく「なにを掲載するか」。つまりコンテンツのそのものにみんなが困っている、という事実でした。活きたコンテンツを発信するための日常の業務フローの改善もとても大切なポイントになってきました。

全国各地で行われている「Jimdo Cafe」のように、熱意ある中小業者がコミュニティを形成し(なお開催しているのはJimdo日本語版を提供しているKDDIウェブコミュニケーションズ社)コンテンツ制作についてのノウハウを積み重ね、それぞれのウェブ活用の形を試行錯誤しているのはきわめて象徴的なことだと思います。

だからといってウェブ制作者の出番がなくなったわけではありません。予算がないなりのおざなりなウェブサイト制作でなく、専門家としての運用サポートを通じてクライアントの利益に貢献し、その報酬として継続的に対価を得るウェブを利用した経営支援のかかりつけ医ともいうべき存在がこれからもっと必要にされていくだろうし、その市場規模はとても大きなものだと思います。

フリーランス Advent Calendar 2014、次の書き手のご案内と彼女への質問

さて、次のフリーランス Advent Calendar 2014、書き手は2児のママ、アイミン(@aimin10)さんです。現在、デジタルハリウッドさんのアサカツヨルカツというプチ講座を私たち夫婦と同様に担当されてたり、WordCamp Kansai 2014でもともに登壇していたりと縁浅からぬ彼女のエントリ、楽しみです!

わたしからの質問は

「3年後にはどうなっていたいですか?」

です。私はその頃には、ディレクションをもっと磨いて、強い制作チームを作っていたいです。それは起業を意味するのか、それとも今のようにコワーキングの延長線上にあるものなのか、それは分かりません。

ぜひアイミンさんの3年後の夢をお聞かせください!

それでは、まとまりませんがフリーランス Advent Calendar 2014、次のエントリをお楽しみに。深沢でした。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください