レンタルサーバの障害は、大規模なものは珍しいですが小さなものはよく生じています。
多くのレンタルサーバはウェブサーバとメールサーバの両方がサービスに込みになっている場合が多く、実際ウェブサイトもメールもひとつのサーバで運用しているという方が多いのではないでしょうか。これは割とリスクの高いやり方でして、仮にそのサーバがなんらかの障害で動かなくなってしまうと
- サイトが閲覧不能になる
- メールの受信ができなくなる
- コントロールパネルまでアクセスできない事態になると引っ越しすら困難になる
という事態に陥ります。こうなっては多くの方は手も足も出ず、サーバの復旧を待つしかないということになります。今回はこうしたリスクの高い状態を脱し、よりアクシデントに強い体制をつくろう、というお話です。
ドメインのコントロールパネルとサーバのコントロールパネルは分ける
レンタルサーバを契約する際に一緒にドメインも契約、同じコントロールパネル上で管理している(レンタルサーバ会社指定のネームサーバでドメインを管理している)というパターンは多いですが、こうなると不測の事態でコントロールパネルにアクセスできなくなったときに、サイトの引っ越し・緊急退避すらままならなくなります。できればドメインはサーバとは別のコントロールパネルで管理できるようにしたほうがいいと思います。
新たにサイトを立ち上げる場合はドメイン管理会社とレンタルサーバ会社を別々のものにしたほうがよいでしょう(なお同じ会社が運営しているものでも、コントロールパネルが分かれているなら問題ないでしょう)。すでにサーバとドメインを一緒に管理してしまっている場合は、ドメインの移管手続きが必要になります。こちらは移管先と移管元の双方で手続きをする必要があるためちょっと面倒ですが、やる価値はあります。
ウェブサーバとメールサーバを分離し、引っ越ししやすい体制をつくる
先ほど述べたように、ウェブサーバとメールサーバをひとつのサーバで運用するのはリスキーです。ウェブサーバとメールサーバを別々のものにできれば、一方に大規模障害が起こっても一方が生き残り、打てる手が多くなるでしょう。また事故はなくとも、ウェブサーバのスペックに不足が出たときにグレードアップのためにサーバの引っ越しをおこなうこともありますが、その際にメールを気にしなくていいのは大きなメリットです。
具体的なやり方に関しては、このブログで過去に書いたこちらの記事が詳しいです。
まずは今借りているレンタルサーバにプラス、もうひとつメールサーバ(さくらのメールボックスやG Suiteあたりがメジャーなところでしょうか)を借りて、DNSのゾーン設定でMXレコードを新しく借りたサーバに向けた内容に変更、メールクライアントを利用している場合は新サーバ向けの設定をおこなえば完了です。ただしメールのアカウント移転は少々面倒な上に、業務で利用している場合はトラブルがあると大変なので、自信がない場合は専門家にお願いするのがいいでしょう。
バックアップは利用しているサーバの外に取る
ウェブサイトのデータバックアップは大切です。ファイルはもちろんのこと、CMSを利用している場合はデータベース(DB)もしっかりとバックアップしておく必要があります。仮にウェブサーバが大規模障害を起こして止まってしまっても、DNSにアクセスできて、かつバックアップが取れていれば比較的速やかにサイトを復活させることができます。
レンタルサーバによっては自動的にファイルとDBのバックアップを取ってくれるサービスがあるので、これを利用するのはひとつの手です。ただバックアップファイルの保存先には気をつけてください。サイトと同じサーバ領域にバックアップを保存していると、仮にサーバにアクセスできなくなった場合にバックアップが閉じ込められることになってしまいます。
有料であったとしても、外部のサーバに自動バックアップをしてくれるサービス(WordPressであればVaultPressなど)を利用するとより安心です。
サーバの死活が生活に直結している人ほど、リスクの分散を
レンタルサーバの多くは高い稼働率を誇りますが、どこを使っていたとしても、起こるときには起こるのが障害。特にECサイト運営者など、借りているサーバの死活が収入や生活に直結している人は特定の一社にご自身の生活やビジネスを預けるべきではないと私は思います。もしもサーバトラブルであなたのビジネスが大きな損害を被ったとしても、ほとんどのホスティング業者(レンタルサーバ業者)はその損害を完全に補填することはできないのです。
レンタルサーバ1契約で確かにいろいろなことはできるようになりましたが、いざというときに自分の身を自分で守れるよう、まずはDNSとレンタルサーバの分離からでも、トライされてみてはいかがでしょうか。基本的にレンタルサーバだけでもそれなりのリスク分散はできるのですから。
なおさらなる安心を求めるならばAWS(Amazon Web Services)でウェブサーバ・メールサーバ、バックアップ用のサーバからDNSまでひととおり揃えてしまうのもいいでしょう。サイトの成長に応じたスケールアップも容易です。ただ、相応のコストがかかるのと、お一人で管理されている場合は勉強すべきことが結構多くなるかもしれません。
追記:そもそもサーバを自分で持たない選択肢もある
これまでサーバをご自身で借りてサイトやサービスを運用する、という前提でお話をしてきましたが、今ではJimdoやWix・WordPress.com・MovableType.netなど、サーバごと面倒を見てくれるタイプのサイト制作・運営を助けるサービスがたくさんあります。ECサイトでもモール出店はもちろんのこと、カラーミーショップやStores、BASEといった優秀なサービスがあります。
カスタマイズの自由度は概して低いですが、工夫すれば十分にビジネスの役に立つサービスです。サーバ管理のコストを払ってでも特別にやりたいことができた…そのときにはじめてサーバを借りてご自身のサイトをホストする道を検討する、というくらいでもいいのかもしれませんね。
このブログ主の夫のほう。大阪を中心に活動するウェブデザイナー。水交デザインオフィス代表。JUSO Coworking運営。趣味でハウス・ディスコDJ / デレマスP。共著書『世界一わかりやすいWordPress 導入とサイト制作の教科書』発売中です。