LINEスタンプ「シロイヒトとちくびねこ」をリリースしたときの話

5月8日、いよいよLINEが「LINE STORE」にて一般クリエイターのスタンプを取り扱いはじめました。

LINE Creaters Market

わたしたち水交デザインオフィス夫婦も「シロイヒトとちくびねこ」というスタンプを4月上旬に作成、審査に出していましたが、これが同日承認され即座にマーケットがオープン、何の前触れもなく私たちのスタンプは、強豪ひしめく大海原に乗り出しました。

スタンプを描いたふかざわちかよは、まず無名と言っていいようなイラストレーターなのですが、幸いにして2日目、5月9日10時の時点で人気スタンプベスト20になんとか残っているという健闘を見せています。

その一日の中で、考えたこと・分かった(ように思えた)ことを書いていきたいと思います。

先行者のアドバンテージは大きかった

スタンプ例1LINEのクリエイタースタンプページがオープンするまでに、スタンプ承認のメールが到着しました。ここからマーケットに出そうと思えば「リリース」というボタンを押すことが必要です。この承認メールを受け取ってからページのオープンまでにリリースをすませ、かつSNSで承認を受けたことを拡散できたことは大きかったと思います。

というのはこのクリエイタースタンプページがオープンした瞬間、出品されているクリエイタースタンプはわずかに60程度、ページングにして3ページ程度の分量でした。そこにページオープンの報を聞きつけた人たちが多く流入したことは想像に難くありません。とにかく目に触れること。スタンプの良し悪し以前にこうして多くの人の目に触れることができたのは本当に大きかったと思います。

その後すぐにスタンプの数は後ろから何百と増えていきましたが、そのときの初速を活かして、私たちのスタンプは上位にへばりつき続けました。結果1時間程度、人気スタンプベスト8に入りLINE STOREのトップページに表示されるというおまけまでつきました。

これはオープン時という祭状態の時のお話ですので一般化することは難しいのですが、なんにせよ新しいスタンプをリリースするときに、どのようにプロモーションを打って多くの人の目に触れるか、これは例えばiOSアプリケーションと同様、大切なステップになってくるのでしょう。

順位変動はかなり頻繁に起こる

実感として5分〜10分程度の間隔で人気スタンプの表示順は更新されています。そして売上(分配金)の報告もリアルタイムといってもよい頻度で更新されます。昨日一日はリアルタイムに変動する順位や売上が気になってなかなか仕事が手につかない有り様でした。昨日はまだスタンプの数も少なかったため、SNSなどで広めると一時的に順位が上がったり下がったりと影響がダイレクトに伝わるようでした。9日現在はおそらく全体の購入ペースも随分と大きくなり、それほどめまぐるしい順位変動は見られなくなってきました。

認知度よりも実用性?

スタンプ例2そのうちに、商業漫画のキャラクターや「うまい棒」のキャラクター、既に発売されているスマートフォン向けゲームキャラなどのスタンプが参入、ぐいぐいと勢いよく上位に駆け上がりました。これはもう仕方がない、ここで私たちのスタンプも上位20位から早々と退場することになるだろうと思っていましたが。

半日もするとそれらのスタンプのうち、いくつかの順位はスッと落ちてしまい、結果私たちのスタンプが再び抜き返すということに(もっともそのころには私たちも12位と随分と順位を落としていましたが)。ある程度知名度のあるコンテンツが圧倒的に有利、という方向には動かなかったことが面白かったです。

すでに知名度のあるコンテンツというのは原作などの文脈にそって作られているものなので、その原作を知らない他者とのコミュニケーションには少し使いづらいのかもしれません。だから有限のファンに渡ってしまって以降は伸び悩むものなのかもしれません。

スタンプ例3そういった意味では無名のイラストレーターが書いたものというのは無色透明です。さっと使えるし「これ何?」「ここで見つけたんだ」といったようなお話にもしやすいのかも。LINEスタンプは他者の利用しているスタンプをタップすることでそのスタンプの購入ページに行けるようになっているので口コミは大変重要です。

マストの表現はおさえる、そして「言いにくいこと」をスタンプにする

スタンプ例4スタンプの実用性を上げる、とは具体的にどういうことでしょうか。
「40もスタンプのネタがないよ」という方も多いのですが、実用性というところを考えると、案外スタンプ40個というのはそれほど難しいことではありません。

彼女はそれなりに用事から雑談までLINEを使う人なので、まずは「これはマスト、鉄板の表現」というものを描き、さらに「こんなのがなかった。あったらいいのに」という自分のニーズからスタンプを描き起こしました。

shiroihito-chikubineko01_stamp34テキストで書けばよいものをわざわざスタンプでやろうというのには「微妙なニュアンス、表情を出したい」という使い手のニーズがあります。とくに「言いにくいこと」をスタンプにするというのは重要です。「お断りします」「申し訳ありませんでした」「連絡ください」「いま連絡できないです」などの表現はとかく気を使いがち。これをゆるいニュアンスで表現したことは私たちのスタンプの実用性をぐんと上げているのでは、と思います。

これができれば、あとの数点は遊びましょう。キャラクターを自由に躍らせるようなものが数点あれば、より個性的になると思います。
なお、こうした表現は数点に抑えたほうがいいと思います。キャラクターの個性に依存した表現ばかりのスタンプには汎用性がありません。どんなにキャラが魅力的でも使われなければ広がりません。

払い戻し最低額10,000円の壁

スタンプ例6これは賛否両論を巻き起こしているようですね。確かに200(50円で売った場合。実際には値引き販売もあるようなのでそれ以上)売らないと報酬ゼロというのは高いハードルです。これでチャレンジする気を失った、という人は結構いるようです。

200個売ろうとすれば、自分が所属するコミュニティでしか売れないような文脈のスタンプでは到底太刀打ちができません。ある程度の広報(大げさなものでなく、継続的にSNSで宣伝するなど)も必要になってくるでしょう。
LINE運営としてはおそらく、こうした作者のサークルの範囲内でしか売れないようなスタンプをできるだけ減らしたいという意図があるのでしょう。そのための「10,000円の壁」なのだと推察されます。これを運営側の審査で恣意的に判断することはできませんし、スタンプポリシーとして明文化することもできないでしょう。

要するに、作り手の覚悟を試しているのです。
「これで10,000円分売る、売れなければお金はいらない、それくらいのクオリティで作ってる」そういう作り手に集まって欲しい。でも「ぽっと出してみたら当たっちゃった」という、そんな「LINEドリーム」の可能性も残しておきたい(実際そういうドラマも起こるでしょう)。そういう運営の本音が「払い戻し最低額10,000円の壁」から聞こえてくるようです。

ちなみに一日でナンボ稼いだんでっか

あまり具体的な売上額をべらべら喋るというのは性に合わない上にゲンが悪いので控えさせていただきますが。
スタンプの制作には下絵制作からフィニッシュまでおおよそ4時間かけました。多分、周囲のスタンプに比べてかなりの省力制作だと思います。一日でその分の作業費用は十分ペイして1.5倍くらいになったような感じです。

次作も出します

ということで一日LINEスタンプをやってみた感想でした。結構幸先よいスタートを切れたので、調子に乗って次作も作りたいと思いますが、作者のちかよは数日前に次男を産んだばかりでございます(マーケットのオープンはよい出産祝になりました。ありがとう運営さん)。少しリリースまでかかると思いますが、またこちらでご案内したいと思います。

「このスタンプの作者はこんなスタンプも出しています」機能があったら嬉しいのになーと思いつつ。

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シロイヒトとちくびねこ|クリエイタースタンプ|LINE STORE

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スタンプ作者・ふかざわちかよ(深沢周代)について

ふかざわちかよ

あまりに無名なので、誰かが調べてくれたときのために、ふかざわちかよのことを少し書きます。
フリーのウェブ制作者である私・深沢幸治郎の妻です。私の仕事のマネジメントをやりながら、カット等のイラストを書きます。
彼女のこれまでの仕事は、彼女のPinterstページにまとまっています。

お仕事は産休が明ける2014年10月ごろから募集しております。

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