先に結論から申し上げると「理想のパーマリンク構造」という問いには正解がなく、サイトが置かれているさまざまなシチュエーションに応じて選択されるべきです。これについてFacebookを通じて多くの人と考えてみる機会に恵まれたことは、現在のウェブを取り巻く環境やユーザーについて考えるきっかけになり、とても私にとって有意義なことでした。このいきさつは記録しなければと思い、この記事を書きました。
はじめに―パーマリンク構造ってなんだ
ウェブサイトを作るとなると必ず決めないといけないものの一つに「パーマリンク構造」というものがあります。
まず、パーマリンクというのはウェブページに対して付けられる「恒久的なURL」です。難しければ多くの場合、単に「ページのURL」と読み替えてもらっても構いません。
恒久的なURL?
言うまでもなくURLというのはウェブページを探すために非常に大切な情報です。
あなたがどんなに素晴らしい記事を残していても、その記事のURLが変わってしまうと外からのリンクは切れてしまいます。仮にあなたがなにか情報を探しているときに、リンクをたどった先で「ページがみつかりません」と言われてしまっては悲しいですよね。そしてそんな経験は誰にでもあると思います。
あなたの記事にそんな悲劇がないようにも、ページURLはできるだけ変えないほうがいい、というか変わらないものとしたほうがいい、というわけです。だからウェブページ、特にブログページに当てるURLは「恒久的であるべし」という考え方から「恒久的リンク=パーマリンク」と呼ぶようになったのでしょう。
CMSがつくるページのパーマリンクは「パーマリンク構造」で決まる
CMSを用いる場合には記事のURLは特定のルール・設定に従って自動的に発行されることがほとんどです。そのルールがパーマリンク構造です。パーマリンク構造の設定によって発行されるURLが決まります。
よくあるブログのパーマリンク構造はこんな感じ。
http://(ドメイン名またはサイトルートパス)/(記事のカテゴリ名)/(記事名または記事ID)
ちなみにこのブログのパーマリンク構造は
https://suikoudesign.com/suikolog/(記事のカテゴリ名)/(記事ID)
であり、上記の構造にあてはまります。このように、CMSによって作られるページのパーマリンクは「パーマリンク構造」によって決定されます。
理想のパーマリンクってなんだろう
http://(ドメイン名)/(記事のカテゴリ名)/(記事名)
というパーマリンク構造は現在においてもとても人気があるものです。理由はふたつ考えられます。
- URLそのものがサイトの構造を示しており、人間が読んだ時にページの階層位置が把握しやすい(IDなど人間にとって無意味な情報が入りにくい)
- カテゴリ名や記事名といった検索の文脈に合致しそうな文字列をURLに含んでいるため、検索エンジン対策になりそうだ
こうした理由で、現在に至るまで、長くブログや企業サイトなどでサイトの構造に従ったパーマリンク構造が取られてきました。
しかし近年状況は変わりつつあります。
パーマリンク構造はSEOに効果なし?
SEOの効果を期待して、商品やサービスの名前、あるいはジャンルや地域などそれらのアイテムが含まれるカテゴリを必ずしもURLに含める必要はありません。
またキーワードをURLに含める必要もありません。
その根拠として上記の記事ではGoogleのJohn Mueller(ジョン・ミューラー)氏の発言を複数引用しています。なるほど検索エンジン対策として、URLにキーワードを含めることには、現時点でそれほど意味はなさそうです。
より恒久性のあるURLを。カテゴリ名はURLに含まない説
私が司会を務めたWordCamp Kansai 2015の「WordPressなんでもフォーラム」にて同じくパーマリンクの話が出てきました。そこで私が感銘を受けたのは「パーマリンクは恒久的リンクなのだから、不変性を重視すべき。その点でカテゴリ名はURLに含めるべきではない」という言葉でした。
たしかにサイト運営の中で蓄積された記事のURLは変更されるべきではありません。多くの外部からのリンクや、Facebookの被いいね数やTwitterの被ツイート数、はてブ数などの貴重な実績やつながり、そういった無形の財産が水の泡になってしまうからです(リダイレクトという手もありますが、それにも大変な労力がかかる場合がほとんどです)。
その中にあって記事のカテゴリというのはURLに含めるにはとても移ろいやすい要素です。記事が所属するカテゴリが変わる場合もありますし、リニューアルなどをきっかけにカテゴリの分け方そのものを大きく変えたいときもあるでしょう。カテゴリ構造を変えたそのときに、多くの実績を残したURLまでもが変わってしまい、実績が消えてしまう。これは悲しいことです。
だから、カテゴリはURLに含めるべきではない…なるほど、納得です。
最強のパーマリンク構造をめぐってFacebookで議論になった
さて、私はこのお話を持って帰って考えました。いま作ってるWordPressのサイトがあって、そのパーマリンク構造をどうしようかと。「恒久性」においてもっとも強いパーマリンクとはなんなのだろうか…。いろいろ考えて、これじゃないか、とFacebookに書き込んでみました。
http://(ドメイン名)/(記事ID)
理由はざっと以下のとおり。
- WordPressが生成する記事IDは必然的にユニーク(他とかぶらない)であり、独立性は必ず保たれる
- 記事執筆時にスラッグを考える必要がない
- 前述のとおり、カテゴリやタグなどの分類が変わった場合の影響をまったく受けない
これに対して、「なんでもフォーラム」登壇者を含む、様々な方からご意見をいただきました。その内容が素晴らしいので、以下どんどん引用していきます(Facebookのコメントですが、許可はいただいてますよ念のため)。
記事IDより記事名(スラッグ)の方が恒久的なんじゃないか説
記事IDは変わるんですよ。システムを変えたら。(菱川拓郎さん)
盲点でした。WordPressを使う限りIDは恒久的なものですが、たとえばブログのコンテンツをconcrete5に移動しようとなったときに当然記事IDは変わりますし、意味のほぼないIDを自由な文字列として移していく作業はまずできません。でもでも、記事名(スラッグ)だって内容が変われば変わることだってあるかもしれないじゃないですか。
理想的にはスラッグですね。スラッグが根本的に変わるということは、ページの内容が変わってるので、それはURLが変わってもいい、というか変わるべきなんですよね。(菱川拓郎さん)
なるほどー。記事の内容が変わってスラッグが変わる→URLが変わるとあとでリンク切れが起こるからいけないんじゃ…とは思ってたけど、そのためのリダイレクトですからね。Redirectionなんて便利なプラグインもありますしね。
http://(ドメイン名)/(記事名)
が最強なのではあるまいか。
こうおっしゃる人もいることだし…
自分は、可読性も含めて投稿名をユニークにつけるようにしています。
http://kwaka1208.net/office-on-github/
(わかさん)
うん、やはり記事名のほうが可読性は高いですよね。とっつきやすい。URLを見てる人も結構いるなら可読性も大事。
原則は記事名(スラッグ)・記事名が入力されないときはID 案
とはいえ、日本人は英語のスラッグを考えることができないから、IDにしちゃうというのも分かります。concrete5は、スラッグを入れればスラッグで表示され、入れなければIDで表示されるという仕様で実装しました。(菱川拓郎さん)
IDとの折衷案です。お客さまがスラッグを毎回入力してくれない、という場合は多くあります。スラッグの入力がない場合、URLにそのままタイトルに使われた文字列が入ることになり、結果日本語混じりのURLになってしまいます。これを避けるためにスラッグに入力がない場合のみ、スラッグの代わりにIDを挿入する、という方法ですね。
WordPressでは大曲 仁さんが下記のような実装方法を公開されてます(ただし後藤 賢司さんからインポート・エクスポート時にスラッグに不具合が生じる可能性も指摘されています)。
WordPress の投稿スラッグを自動的に生成する | Simple Colors
たかがパーマリンク、されどパーマリンク。提案時のこと。
URLのあり方って、みんなほんとこだわるよね。そのこだわりがいまいちわからない。
見た目の話からなのか、SEOなのか。
見た目のことなら、ひっしーの言ってることに同意だし、SEOなら、URLがなんだろうと、そこまで意識しなくても順位にちゃんと評価されるし。
やっぱり納品時の見た目なのかな。
(YATさん)
彼の人気ブログ「YATのBlog」のパーマリンク構造はWordPressのデフォルトのまま。それでもたくさんの人を集め続けてるわけで「SEOなら、URLがなんだろうと」というあたり、かなり説得力があります。
もうSEOのためにカテゴリ名+スラッグで…というような時代でもないという意見には賛成です。
そうなると見た目というか、ページ階層がちゃんと分かるURLがいいという感覚で「カテゴリ名+スラッグ」を取り入れてきたんだけど、これも必然性がないといいますか。それならパンくずリスト、またはそれに準じたナビをちゃんとつけようよという話にもなるかもしれません。
すくなくとも記事のメタ情報を示すのはURLの役割じゃないのでは、と。
とはいえ、もちろんクライアントさん側にもURLにこだわりをお持ちの方はたくさんいらっしゃるわけですから、こんなお話も出てきます。
そのCMSでいちばん無理の無いパーマリンクにするのがよいのかなと思っています。お客様から、パーマリンクが階層になってないとSEO上不利と聞いたので何とかして欲しい等、パーマリンクのご要望ってすごく多いきがする。(mihoさん)
今までに見た案件で、お客様のこだわりのURL構造にするために沢山リライトルールを適用したものがあって、そうすると、その後の構造の変更とか、別の投稿タイプが増えた時とかにも事故のもとになって、えらい大変だったようです。
そういうのを見てから、WordPressはURLによって表示する内容を決めるCMSだから、無理に変えるよりはナチュラルにしておいたほうが、工数の削減にも、今後のメンテナンスのしやすさにもつながりすますよ。というような表現で、URLについてクライアントさんに納得を頂くようにしてたんですね。
今回の件で、さらにパーマネントリンクと呼ばれるように半永久的にそのURLであることが大切なことであり、SEOにも効果的(引っ越しや、CMSを変えた場合にもリンクが引き継げる)ということで、より説得しやすくなりました。(megane9988さん)
WordPressなどパーマリンク構造を自由に変えることが難しいCMSも多いです。ご要望が出たとき「このパーマリンク構造を実現しようと思ったら別途料金です」なんて話をすると「えっ」と驚かれるクライアントさんも多いのですが、これが意外に手間になったりするんですよね(のちのちなんらかのエラーを抱えるリスクになることも)。
パーマリンク構造はSEO上ほぼ効果なし、という話もある今、URL構造のためにどれだけの手間=お金を費やすか…? というのも結構プロジェクトのプランニング段階ですりあわせておいた方がよい項目だったりもします。
日本語URLについて
さらに議論が広がり、日本語URLについてこんな話が。
みんな日本語URLを嫌いすぎなんですよね。長くて汚いとか、メールで送る時に改行されるとか言うけど、URLなんて、今時ほとんど見ないでしょ?ブラウザでも、特にモバイルではドメインしか表示されませんやん。メールで送ることだってない、送るとしたらメッセンジャーでしょ。検索エンジンに意味が伝わるだけ、日本語URLはIDよりマシ、なんです。(菱川拓郎さん)
という菱川さんのお話。「URLなんていまどき誰も見ない」確かに閲覧者レベルではそういった場合も多いのかも…
このコメントには多くの「いいね!」が付くとともに、やはりどうにも慣れないな、という意見もちらほら。
個人的にアドレスバーに日本語が出てるのが未だになれないです。それならIDで英数がいいなぁっと・・・
(あまりためにならないコメントだけどどうしても言いたかった・・・(るっちんさん)
日本語URLはシェアしにくいから嫌だな…。(SNSやメルマガとかもろにURLでちゃう。)(森和恵さん)
僕も日頃は日本語URLは悪しきものとして考えていたので、この気持ち悪い感覚、とてもよく分かるんですね。しかし、確かに多くの長いURLはさまざまなところで短縮化されたり後ろを略されて表示される昨今、IDよりまだマシ、とのお話にも説得力があります。でもやっぱり、できれば避けたい、かな…
人の感覚に寄り添ったパーマリンク構造を推す声も
ただ、これサイトの性質にもよるなぁと思っています。
日記とか日付がそれなりに重要なサイトであれば日付とかは入っていても思ったりしてます。(Toro_Unitさん)
ブログだったらいいかもだけど、会社サイトだとページのURLにカテゴリに入ってないとなんとなくしっくりこない…。一度登録したカテゴリを変更することって頻繁にあるのかなぁ。このへん、いつも迷うんだけどね。うん。
(日本語URLについて:筆者注)可能な限り、URLはシンプル・一意がいいですし、URLでどんなページかを推察できた方がいいような気がします。(たしかに閲覧者は意識してないかもですが、サイトを運営する側の管理面的にはその方が運用しやすいと思いますです。あと、怪しいサイトを踏まないようにURLを見ている人は結構多い気もします。Web玄人じゃなくても、ネットリテラシー的に。)(森和恵さん)
そうなんですよね。「恒久的である」という本来の目的を思えば無駄が多いことかもしれませんが、URLにサイト構造が入っているのはやはり収まりのよさを感じます。
たとえばあなたが手紙を出すときに、郵便番号さえ正しく書けば、送り先はかなり細かいところまで特定できます。私の事務所の所在地なら、
532-0023 1-17-13-405
と数字の羅列さえ書けば「大阪府大阪市淀川区十三東一丁目17番13号 405号室」という情報が導き出されるようになってます。でも所在地をそのように表現する人はいない。それは場所を示すときに、無駄であろうと人間に認識しやすい地名を使いたい、そうでないと気持ちが悪い心が働くからなんでしょうね。
上のお二人の意見にもふむふむとうなづくのでした。
そして結論は
冒頭申し上げたとおりです。
「理想のパーマリンク構造」という問いには正解がなく、サイトや更新者が置かれているさまざまなシチュエーションに応じて選択されるべき
ということで。どの論にも一定の説得力があるのですが、この設定にさえしておけば安心、みんな納得! というような結論は出るはずもなく。
パーマリンク構造はクライアントさんやサイトの構造、閲覧者の属性など様々なファクターに応じて提案されるべきものです。しかしパーマリンク構造についての理解を深める事で一定の成果につながったり、リスクを回避できることがあるということはぜひ覚えておくとよいかと思います。
たかがパーマリンク構造、されどパーマリンク構造。サイトを新しく設計するときに、ぜひ時間をとって考えておきたいですね。
このブログ主の夫のほう。大阪を中心に活動するウェブデザイナー。水交デザインオフィス代表。JUSO Coworking運営。趣味でハウス・ディスコDJ / デレマスP。共著書『世界一わかりやすいWordPress 導入とサイト制作の教科書』発売中です。