この記事は「フリーランスの今年とお金の話 Advent Calendar 2016」への参加記事です。いろいろなフリーランスの方が気になるお金の話をいろいろしてますので、リンク先から他の参加記事もぜひ併せてお読みください。
かんたんに自己紹介
はじめてこのサイトをご覧になる方もいるかと思いますので簡単に自己紹介を。大阪でフリーランスのWebデザイナーとして活動している、深沢幸治郎といいます。奥さんと息子2人との4人家族で暮らしつつ、JUSO Coworkingというコワーキングスペースを夫婦で運営しています。
この記事について
フリーランスならではの話とはちょっと違うかもしれませんが、1ヶ月半前にZaimとおこづかい帳アプリを使って自分の身の回りのお金の管理を始めてみました。その勢いでTogglというウェブサービスを使って作業時間の管理も始めてみると自分によい影響があり、これはどうも塩梅がよさそうだというお話をしようと思います。
それは家計簿から始まった
そもそも僕はお金や時間の管理が苦手な人です。昔からお金のことなんか考えるのも面倒くさいし他人に任せたほうがうまくいくと思っているタイプでした。ですので家計は一緒にはたらく奥さんに任せきり、事業の経理も奥さんや税理士さんにお願いしていました。
ですが今年に入り、奥さんがさまざまな地域活動や新事業も行うようになり、彼女にかかる負荷が一気に上がりました。家計や経理にかけられる時間が少なくなり、いろいろな問題が生じるようになりました。
自分のお金を管理していないつらさに気づく
これまでは事業や家計の立替金を自分の財布に戻すにも奥さんを通していたのですが、彼女も毎日忙しく、立替金の返済を依頼するにも気を遣います。また立替金の清算が滞ると実質自分の手元にいくらのお金が残っているのかが徐々に分からなくなってきます。
事業や家のキャッシュフローもロクに知りませんから漠然と家にはお金があるような気分になっているし「今月はちょっと苦しい」と言われても「そうなのか」としか言えません。なにを引き締めようというような建設的な話もできません。結果、家や事業のお金どころか自分のお金さえよく見えなくなってしまい、それが自分にとってのストレスになっていたのでした。
恥ずかしながら、そういった瑣末なことが重なってケンカにもなり、なかばヤケで「もう僕が家計を見る。やってみる」と言って家計簿アプリを検索しだしたのがキッカケになり家計簿をつける生活が始まったのでした。
まずはアプリさがし
新しいことはなにごともカタチから入るのが大事です。多忙のあまり家計簿をつけなくなって久しい我が家ですが、自分がやるからにはアプリの力を駆使して何にお金が使われたかを管理できるようにしようと思いました。
いろいろ見てみましたが、昔に自分がおこづかい帳をつけようとインストールしてそのまま挫折してしまった「Zaim」を再インストールすることにしました。
挫折はしたものの、入力のインターフェイスが優れており、またレシート読み取りも簡単なものならかなりの精度でこなしてくれた体験があったからです。またZaimはおこづかい帳にはオーバースペックだけど家計簿ならうまく使えそう、という印象もありました。
引き継ぎと自動化
まずは家計の現状を掴みます。家にあるお金の場所、通帳の種類とそれぞれの口座の役割をざっと掴みました。
つづいてメイン口座の履歴を追い、固定費と収入のある日を把握、月々定額で支払うお金はZaimの自動入力に組み入れました。引き落とし日もGoogleカレンダーに入れ通知が飛ぶように、またメイン口座は通帳記帳せずともお金の出入りが分かるようにオンラインで取引履歴が閲覧できるサービスに申し込みました。
とにかくラクできることはラクできるように、最初だけ頑張ろうと思ったのです。
※なおZaimには銀行口座やクレジットカード番号を入力すれば利用情報と連携して入力が自動化できる機能があるということだったのですが、さすがにそういった情報をサービスに渡すのはリスクが高いと判断したので、これは利用していません。
家計簿運用の開始
奥さんと話し合って、ざっくり家計の項目別予算を定めました。これは運用しながら徐々に最適な額を見定めるつもりなので、あまり細かくは設定していませんし、予算を守ることに必要以上に躍起にならないように気をつけています。
また最低限の入力ルールを定めて奥さんにも負担にならない程度の入力をお願いしています。もしも間違いがあればすぐに指摘し、自分が思っていた入力のあり方をできるだけ丁寧にお願いしています。口座間の調整や振替などややこしめの入力は自分で担当することにしました。
家計だけでなく自分の個人的なお金も管理することにした
使ったお金の入力が習慣化してきたあたりで、自分のお金も管理したい欲求にかられるようになりました。むしろ無計画に使うと苦しいのは自分のお金です。そこで家族間でデータを共有するZaimとは別にシンプルさを重視しておこづかい帳アプリを併用することにしました。またこれまで持っていなかった自分個人のための口座も自分で調べて開設しました。
シンプルながら、支出・収入にタグ付けをすることで立替金の処理(予算の支出・収入の計算に入れないままお財布の残高に反映させる)が簡単にできることが気に入りました。こちらの運用は結構ゆるくやっています。飲み会などでの出費入力を忘れても、あとから適当に帳尻を合わせますし、あんまり細かくなにに使ったかも書いてません(カテゴリ分けだけはちゃんとしときます)。他人に共有するものでもないので、自分が思い出せれば十分なのですから。
自分でお金を管理することで起こった変化
そうして1ヶ月が経ちますと、自分の中でいろいろとよい変化があることに気づきました。箇条書きにするとざっとこんな感じ。
- 何かあれば「ラクできないかな」「自動化できないかな」と考えるようになった
- 無駄な固定費を削るための多少の労はいとわなくなった。
- 財布に現金が残っていなくても「いくら立て替えたか」が明確なので無駄に不安がらなくなった
- 多少ドンと使っても何に使ったか思い出せるから自分で納得ができるし、その分節約をがんばるモチベーションになる
- まとまった出費の前に自分で事業立替金を財布に戻すための経理事務を覚えだした
- そこから連鎖して事業のキャッシュフローを意識するようになった
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- 仕事を終わらせて請求しお金を得る、その流れを強く意識するようになった
- お金がないならいろんな理由で遅れてしまった案件をなんとか着地させ終わらせる、という強いモチベーションにもつながる
- 周辺の経理事務のことを少しずつでも覚えていこうという動機が生まれてきた
- むしろ無記録でお金を消費すると赤字のラインが見えなくなる(自分の財布も、事業も)、そのことが怖くなってきた
特にフリーランスだと事業のお金と自分のお金は密接に連動するため、自分のお金を管理することが事業の経理につながるわけでして、そういう意識の変化ができたのは大きなことだと思っています。
そして時間の管理にも手を伸ばす – Togglのこと
話が変わってもう12月、年末なのに山積みのタスクに不安を抱える日々が続きます。「えいやっ」と年内のタスクを棚卸しし、それにかかるであろう時間を計算しましたが、「いつに何をやったか」のログがないと、タスクに費やした時間や自分の進捗・立ち位置が判断できません。
そこで思い出したのがコワーキング利用者さんが使っていた自分の行動を記録するウェブサービスです。なんだったかなと調べてみるとすぐに分かりました。「Toggl(トグル)」というサービスです。
Toggl – Time Tracker & Employee Timesheet Software
Togglについて
ざっくり言うと自分が「なにを」「いつからいつまで」やったかを記録するためのウェブサービスです。基本的な機能は無料で使える、いわゆるフリーミアムモデルのサービスです。
ブラウザ・デスクトップアプリ・モバイルアプリがあり、様々な場面で行動の記録入力と閲覧が可能であるところも魅力です(とはいえ大体はデスクトップアプリで管理することが多いですが)。
基本的な使い方
まずは自分が抱えている仕事をいくつかの「プロジェクト」に分類、登録します。
なにか仕事に取り掛かるときはTogglに作業内容を書いてタイマーをオン。仕事が終わればタイマーオフ。休憩時やなにかのタスクが割り込んできたときもオフ。中断したタスクはワンクリックで記録を再開することもできます。
25分毎に通知で休憩を促し、5分休憩後にまた再開を促すモードもデスクトップアプリなら設定可能(作業時間・休憩時間も自由に設定可能)です。
記録の手順はだいたいそんな感じです。これだけで「なにを」「いつに」「どれだけ」やったかの日別・週別・月別レポートが勝手に生成されます。有料にするとチームの行動管理に使えたりなど、より便利に使えるそうですが、今のところちゃんと調べていません。今のところはひとりで不自由なく使えています。
Togglをはじめてすぐに気づいたこと
レポートを見てみてまず気づいたのは、下のようなことで2時間以上集中して机に向かっている時間がほとんどないことでした。
- ビル関係の諸業務、コワーキングスペースなので来客があるたびに発生する会計業務
- 急に生じるプチ会議・プチ作業
- 子どもが仕事場に帰ってくる。宿題・習いごとへの送り迎え・クラスの友人を連れてくることもあったり
- 日によっては15分〜30分程度の細切れの作業時間をパッチワークしている状態になっていることも
そしてなにより、なんとなく連絡をしたりブラウジングをしたり重要度の低い仕事をしたりしながら1時間ほどアイドリングしているような時間がわりと簡単に発生していることでした。
「時間がない」のではなく「うまく使えていない」
僕は一日の作業時間を6時間、忙しいときは8時間と見積もっています。職場にいるのは10時〜18時の8時間(+アルファ)、そこから休憩やら余裕やらを見て6時間は作業に当てられているだろう、という漠然とした思い込みで算出していた時間です。そしてそれはスケジュールの計画や作業見積にも含まれている数字でした。
ですが、Togglで記録してみると日中「明確な目的をもって作業をしている時間」は4時間〜5時間にすぎないことが明らかになりました。6時間の作業時間を作ろうと思うと、帰宅後の作業が必要でした。8時間に至っては、深夜までがんばってようやくそれくらいになる(そしてそれだけ働いたらもう脳がヘトヘト)というありさま。
そりゃ一日一日の仕事が終わらず作業の負債が増えていくはずです。
じゃあどうしよう
ふたつのアプローチが考えられます。
実のある作業時間を意識して作る
まずはTogglを意識することで「何をしているか」を明確にできる時間を6時間にできるように心がけます。
予定を詰めすぎない
そもそもコワーキング関係・ビル関係の仕事・おもわぬ事務の仕事・Twitterなどでの面白い(かつ有益な)会話は入ってくるものであるから、日頃は4〜5時間の作業時間で終わる分量を意識して予定を立てるべきなのかもしれません。
立て込んでいるときは時間を奪う要素をできるだけ排除できるように奥さんや仲間と相談して環境を作り、前述した稼働時間を確保する必要があるでしょう。
Togglは時間のおこづかい帳である
まさに「時は金なり」。時間は資産です。お金と同様、あとから「何にどれだけ使ったか」が分かれば少し安心できます。
「なんだかよく分からないけどいろんなことに振り回されていて大事なタスクを終えることができなかった」という漠然とした印象で一日を終えるより「ああいうイレギュラーやこういうトラブルがあったが、今のうちにつぶせてよかった」と捉えた方が前向きに「無駄なことはしていない、さあ遅れを取り戻そう」と思えるのではないでしょうか。
すぐに時間の使い方がうまくなったり、仕事の効率が上がるというわけではないでしょうけど、一日に一度、一週間に一度、一ヶ月に一度、自分の時間の使い方を振り返る機会を設けられるというのは大きなことではないかと思います。
自分は自分のことを誤解していたのかもしれない
そもそも自分は片付けが下手だしお金も上手に使えなかったのだから、お金や時間の管理なんて合わないと思いこんでいました。でも、それはおそらく合う・合わないでなくて、必要に駆られていなかったからなのだと思うのです。
今はお金の入力をきちんとできていないと、不安な気持ちになります。始めたばかりの時間管理も同じようになればしめたものです。
自分でお金を管理していないことから生じる不安や不便を思い出せば、お金を管理する動機が生まれます。そして今は便利なアプリもありますから記録も随分とラクになりましたし、自分の行動が簡単に可視化されます。つかったお金も時間も見えるから、ルーチンの改善や自動化に目が行きやすくなります。そしてなによりそういった改善や自動化を僕は楽しんでいるんだなと最近気づきました。
お金と時間を上手に使えることはフリーランスのよりよい仕事につながるはず。できることから自分の行動をレコーディングすることを来年も継続できますようにと祈りつつ、この記事を締めたいと思います。
このブログ主の夫のほう。大阪を中心に活動するウェブデザイナー。水交デザインオフィス代表。JUSO Coworking運営。趣味でハウス・ディスコDJ / デレマスP。共著書『世界一わかりやすいWordPress 導入とサイト制作の教科書』発売中です。