このエントリは「コワーキング・アドベントカレンダー2011」参加記事です。
さまざまな方がこの一年の日本のコワーキングについて記事を書かれています。是非あわせてチェックしてみてください。
JUSO Coworking、この12月で1歳を迎えました。
この1年の間に日本のコワーキングにも、私たちJUSO Coworkingにも、たくさんのことがあっていろんな人がやってきて。
あっという間でしたが、わたしたちを取り巻く状況は大きく変わっており隔世の感さえ感じます。12月11日に開催された「コワーキング・フォーラム関西2011」はそういった状況の変化を肌で感じることができた、とても貴重な機会でした。
今回のエントリは、先のフォーラムでは語れなかった部分も含め、JUSO Coworkingの1年間をさらっと振り返り、JUSO Coworkingのこれからについて考えてることを書いてみたいと思います。
「コワーキング」ってなんだ?という人はWikipediaにさらりと書いてあるのでご一読ください。
以下の記事もとても参考になると思います。
コワーキングってなんなのか教えてと言われたときのまとめ作りました。 | 東京ノマド営業所
水交ビルのこと
私たち夫婦は、祖父の代から受け継がれている大阪十三の「水交ビル」というビルを父とともに経営してます。いわゆる自営業の三代目、というやつです。
築50年にもなろうという古いビルです。ですが、高度経済成長期前に建てられたものですので外観は無骨ですが、とにかく造りが頑丈です。95年の阪神大震災にもしっかり耐えぬいたタフなやつです。
みなさんご存じの通り、個々数年の不動産不況は深刻で、とくに関西では地盤沈下が叫ばれて久しい状況です。ここ十三でも駅前の一等地にあり、外観も美しいのに空きテナントだらけのビルがたくさんあります。駅前から離れればシャッター通りがそこかしこに見受けられ、見るからに町に元気がない。
もちろん私たちにとっても不況は他人事ではなく、空きテナントが目立つようになっていました。ビルというのは持っているだけで税金や維持費など巨額のお金を食っていくものです。空きテナントが増えれば血が流れ、気を抜けばあっという間に大出血というもので、世間でイメージされてるような左うちわの商売には程遠いものです。
これまでの、月々数十万払ってくれるお客さまをただ口を開けて待っているだけでは早晩立ち行かなくなることは火を見るよりもあきらかでした。
そこで、私たちはこの「JUSO Coworking」と「水交ビルレンタルスペース」を空いた部屋に作りました。
JUSO Coworking、始まる
最初はシェアオフィスを作ろうと計画していました。私たちはおもにウェブ制作を生業にしているので、私の周囲のフリーランスの同業者を集めてギルド的なものを作りたいと思っていたのです。
そういう計画をぼんやりしていたころに、コワーキングというものがあることをTwitterから聞きました。そのときの興奮は今でもよく覚えています。
これなら閉鎖的な組合を作るよりも、もっとたくさんの人が集まる。
ビルにたくさんの人が行き来するようになり、活力やチャンスがたくさん生まれる場所になる。
私たちは希望に胸を膨らませ、少ない予算をなんとか捻出し、JUSO Coworkingを2010年の12月にオープンしました。
当時、明確に「コワーキングスペース」を名乗っていたのは神戸のカフーツ、そして東京世田谷のPAX Coworkingの二つだけだったのではないかと思います。
当時からのひとつの特色としては「ブースプラン」があります。オープンスペースである、ということはコワーキングスペースの大前提ですが、日常使っていただくにはひとり集中できる環境を設けることも必要です。集中したいときはブースを使い、コミュニケーションが欲しいときにはオープンスペースで仕事をする、そういう選択の幅を広げたいと思ってブースを設けました。
もちろんそんなに最初はうまくいかない
とはいえ、今年の春になるまでの半年間はひたすら忍耐の期間になりました。
散発的にメンバーはやってくるのですが、メンバーとメンバーは十分に繋がらず、私たちも日々の生業に追われ有効な宣伝も打てずにいました。「コワーキング」という概念を説明するのにも四苦八苦していました。
もちろんビルから血は流れつづけています。焦りました。月の利用者が0、という月もあり、正直心が折れそうになったこともあります。
そんなおり、メンバーさんと運営についてしっかりお話をする機会を設けました。メンバーさんからの「ここらで下半期の運営会議をしようよ」というアクションもあってできたことでした。これまで「わたしたちのJUSO Coworking」が「私たちを含めたメンバーたちのJUSO Coworking」に変化する、その端緒だったと思います。
今思えば、運営を含めて相談できるメンバーが立ち上げ当時から集まってくれていました。
コワーキングスペースはオープンする前にコミュニティの醸成が必要だ、とよく言われますが、それを十分にできなかった私たちにとって、この期間がコミュニティの芯を作るために必要な期間だったのかもしれませんね。
視界が開けてきた下半期
相変わらず本業は忙しく十分にJUSO Coworkingにコミットしにくい日々が続いていますが、メンバーさんから様々な問題提起やイベントの提案がなされるようになりました。おりしもコワーキングそれ自体が認知の幅を広げ、様々なスペースのオープンラッシュが始まった頃です。
毎月のコワーキング体験イベント「JUSO Jelly!」を7月から開始し、これまで「十三育児オフ」として運営していたイベントをJUSO Coworkingにたぐりよせ「家族ラボ」という集まりを始めました。二ヶ月後の9月には両イベントを統合し「JUSO Jelly! + 家族ラボ」を開催、子どもを含めて50人ものご参加をいただきました。
そこへきての「コワーキング・フォーラム関西2011」の開催。コワーキングそのものの議論がソーシャルメディアでも活発化し、様々なモデルケースがあらわれる中で自分たちのスペースの立ち位置・私たちにしかできないこともおぼろげながら見えてきた、そんな下半期でした。
ここまでが過去の話。
さて、未来の話をしよう
じゃあJUSO Coworkingの立ち位置・できることってなんなのよ。ということです。これがすなわち未来の話となります。
夢がどんどん膨らみすぎて、すぐにできること・できないこともあるけれど、まあ聞いてください。
地域性あるコワーキングのモデルになりたい
あなたの考える形をビジネスとして地域に貢献し表現したいのか、地域を愛する純粋な志なのかこれをハッキリさせる事を勧めます。
ですが、どんな形であれあなたが地域の為に立ち上がってください。
私は生まれ育ちが十三ではありません(妻は十三生まれの十三育ちです)ので、十三に対する「地域を愛する純粋な志」を語ることはできません。ですが、単純にもったいないと思っています。阪急電鉄という関西を代表する鉄道のハブであり、大きな歓楽街も素敵な下町も同居している、こんな土地が魅力をアピールできず、元気がないのは純粋にもったいない。十三と言えば、藤田まことさんの「十三の姉ちゃん」だけ、ではもったいないのです。
十三は商売人の町でもあります。輝く魅力がありながら表現できない、そんな商店主がたくさんいます。
12月23日、JUSO Coworkingでは家族ラボとひもづけて「クリスマス☆フラワーアレンジメント@家族ラボ」というイベントを行います。
講師は地元のお花屋さんです。ミラノでフラワーアレンジメントの修行をし、名のある仕事を海外で成し遂げ、東京でもすばらしい仕事を残し、けれども家業のお花屋さんを継ぐために十三に帰ってきました。十三にはそうした人たちがたくさんいます。
また水交ビル内のレンタルスペースには地元のお稽古ごとや教室が入っています。今のところこれらはJUSO Coworkingに直接の関わりを持っていませんが、すべてメンバーさんの生活に+αを与えうるコンテンツである思っています。
メンバーの方には自分の生活に+αを与えてくれるようなコンテンツが見つかれば飛び込んでほしいし、是非機会があればそういったコンテンツを広めるための活動をビジネス・ボランティア問わずやってもらえる動きができれば素敵だなと思います。
十三という土地がもつコンテンツを利用したり、別の地域(近所でも、東京でも、世界でも)に広げたり、別の地域のコンテンツを持ち込んだり…そういう流れがJUSO Coworkingをハブに広がればいいと思います。
利用する人たちにとって、今までにない新しいチャンスや市場、そこまでいかなくても生活をちょっとよくするヒントが見えてくる、そんな場所にしたいと思います。
あえて書きます。別に世界につながらなくたっていいんです。
それは手段であって目的ではありません。
JUSO Coworkingという名前。そのまんまです。なにコレもさいと感じる人がいるかもしれません。
でも、うちは十三のコワーキングスペースです。そこかしこに見られるコンセプティブな名前はどれもとても素敵ですが、多分私たちには似合いません。
私たちが成すことは私たちの足下からはじまるし、利用する人は十三を基点だったり足場だったりステップにしてくれたらいいと思ってます。
だからJUSO Coworking。それでいいんです。それがいいんです。
点と点とをつなげよう
JUSO Coworkingでは来年に部屋数を拡充し、一室をリノベーションしてさらに使い勝手と居心地がよいスペースを作ろうと計画中です。
限られたスペースではありますが、集中して仕事をしたい人のための席・コミュニケーションを楽しむための席など、さまざまな性格の席を作って、使い方の幅が広がるようなスペースにしようとメンバー同士でわいわいと議論をしています。
そして、そのスペースは一般のテナントさんのための共用部分(ロビー)としても開放しようと思っています。
また、レンタルスペースを利用される地域の集まりや教室・お稽古・企業さんにも積極的に利用していただけるようアプローチしたいと思っています。
これは先に述べた「地域性あるコワーキングスペースづくり」と関わってくることなんですが、コワーキングをキーワードに集まってきたメンバーさんだけでなく、水交ビルに集まるこれまでコワーキングとは縁もゆかりもなかった方々も集まってくるスペースにすることで、新しい出会いや機会の創出につなげたいのです。
さらに、有志のコワーキングメンバーさんにワークショップやセミナーを積極的に開いていただこうと計画しています。
メンバーさんのできること・得意なことのアウトプットの場として、ワークショップ参加者さんのコワーキングとの出会いの場として機能させたいと考えています。
他にも考えていることは大小様々あるのですが、共通していえるのは、私たちが持っているもの・メンバーさんがもっているもの・集まる人がもっているもの、それら全てを線でつなぐことをやっていきたい、そう考えています。
生活と仕事をつなげたい
「家族ラボ」は「家庭と仕事を考える」ための集まりです。妻のちかよが始めた「育児オフ」からスピンアウトしました。
これまでの「主婦の集まり」とも「ワーキングマザーの集まり」でもない、ただ「家庭の幸せと仕事」という切って離せないものをいろいろな活動を通じて気楽にお話しましょう、というものです。
現在は「JUSO Jelly!」とともに月に一度の集まりを設け、男女の別・子どものいる方・いない方・結婚している方・未婚の方を問わずに参加していただいています。
コワーキングには「生きる糧を得るための仕事のあり方」を考える側面があります。JUSO Coworkingでは「家庭と仕事」をキーワードに、これまで切り離して考えられがちだった両者を近づけ、その実践と実験の場としてコワーキングを位置づけたいと思っています。まだ家庭をお持ちでない方でも「家庭をもつとしたら」「個人の幸せと社会的なつながり」ということを少し具体的に考える場にしてもらえればと思います。
また、近所の保育園「べるでランド」との提携を秋から開始しました。2歳の子を持つ私たち自身が子どもの面倒を見てもらい、いろいろよくしていただいてる信頼のある保育園です。
共働きの家族にとって、育児と仕事のバランスは深刻な問題です。JUSO Coworkingではその解決の一助になれればと思っています。
まずは来てみなはれ
とまあ、やりたいことも揃ってきて、ようやくスタートラインに立てたのかな、という感想です。
大きな話をしましたけれど、これらは結局、もっとたくさんの方にJUSO Coworkingに集まっていただけるスペースにしないことにはすべて机上の空論に終わります。
だから、たくさんの方に一度でいいからJUSO Coworkingをのぞいてみてもらいたい。そしていろいろ好きなことを言ってほしい。
先に語った大きな目標も参加したい方が参加してくれればよいし、まずは様子見を決めてもらっても全然かまいません。
一回だけでも構わないし、月に一度でも週に一度でものぞいていただけたらこんなに嬉しいことはありません。
これから月契約のプランも加わりますが、それをひたすらお勧めする、ということもしません。一日利用を重ねるうちに自然に馴染んだ方が「これは月契約の方がお得かな」と感じた時点で利用してもらったらいいのです。
どこのスペースさんもそうなんでしょうが、うちは一年経ってもまだまだβ版営業です。
「こんなんやってよ」「これがあったらいいな」大歓迎です。
今は「夜間もやって」というお声に応えて「JUSO 夜Jelly!」を試験的に行っているところだったりもします。
結局コワーキングって人なんだ、というありふれた結論に達した一年でありました。
やりたいことはたくさんあるのに、本業に埋もれて全然動きを作れなかった半年間。
本業に埋もれているのは変わらないけど、今は推進力を生み出してくれる何人かの人がJUSO Coworkingをともに支えています。
今年JUSO Coworkingに集ってくれたすべてのみなさんにありがとう。
来年はもっともっと面白いこと、JUSO Coworkingからどんどんお届けしたいと思います。
せやから、まずは来てみなはれ。
このブログ主の夫のほう。大阪を中心に活動するウェブデザイナー。水交デザインオフィス代表。JUSO Coworking運営。趣味でハウス・ディスコDJ / デレマスP。共著書『世界一わかりやすいWordPress 導入とサイト制作の教科書』発売中です。